「諸君はきのうの専門家であるかもしれん。しかしあすの専門家ではない。」という言葉は、満洲軍総参謀児玉源太郎のセリフであり、司馬遼太郎の『坂の上の雲』に記されています。小説の中で記されたものとはいえ、このセリフが広く知られるようになったので、捨て置けずに、実際の児玉源太郎の言動と照らし合わせ、史実を検証しようとする動きもでているくらいです。
今年、スペシャルドラマ「坂の上の雲」の再放送を見て、このセリフに再会しました。その後、この言葉が気になっています。特に、茶筅が手に入りにくくなったり、茶道用抹茶の安定供給が難しくなったりする現状を考えると、時代の変化の激しさを実感せざるを得ません。このことから、自分自身が「あすの専門家」でいられるのか、自問させられています。
日露戦争においては、旅順要塞を陥落させることよりも、旅順艦隊を撃滅させることが重要でした。ドラマでは、旅順要塞攻撃の目的を正しく認識し、203高地の奪取を優先する判断ができる人が「あすの専門家」とされます。
しかし、現在では空中からの偵察が可能になり、艦隊への着弾観測地点を山頂に確保することは意味を失っています。適切な手段を選ぶためには、最新の技術に追いつく必要があります。
そのために「リスキリング」、つまり新しい知識やスキルを学ぶことが推奨されています。リスキリングは、変化する環境に適応するための重要な手段です。しかし、適切な手段は設定された目的によって決まります。リスキリングの目的を正しく見定めることが、「あすの専門家」であり続けるための鍵だと考えます。