大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和7年4月:稽古

「稽古」と聞いて、「新学期なのだから、平点前で基本の確認」と考えることも大切です。

一方、それが、「稽古」を、点前教習の課題に限定した狭い見方であると気がつくには、外からの刺激が必要でした。

『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか』(梅澤さやか著・インプレス社)は、タイトルが示すとおり、ビジネスエリートに向けて稽古の意義を説いた本です。しかし、茶道、華道、武道、舞踏、工芸と広い領域の稽古を俯瞰しての稽古の本質に関する考察は、習う立場にとっては稽古から得られるものを高めるため、教える立場にとっては、稽古を充実させるためにも有益なではないかと思いました。

「リアルタイムで個別に行うフィードバック」は、対面指導において学習効果を著しく向上させる可能性がある、といった指摘は、教える側に自信を持たせる指摘でしょう。

また、感性を磨く鍵は、「手の使い方」にあるとの指摘から、「手を通じて感性を鍛える」という課題が掲げられています。これまで、触覚という形で、指摘はしてきましたが、「手を通じて感性を鍛える」という言葉で意識した方が、ずっとやる気になれるだろうと、表現の巧みさにも感心しました。

さらに、「体の軸を意識する」ことが、日本人の身体感覚であると普遍化できるのも、茶道だけでなく、舞踏、武道なども視野に収めているからです。

究極は、日本の伝統文化の背後にある共通の方法論が摘出されています。
「それは、いかに自然と一体になりながら、万物が働き合う法則を体に落とし込んでいくかということです。」

抽出された稽古の本質を、個別の場面でも自覚することは、「脱皮」という課題にぴったりのお年玉だったと思っています。

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