大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和7年2月:ミニマリズム

「利休が見いだした「わび」の美しさですが、現代にはどう応用されていると、お考えですか?」

 との質問をテレビ番組から受けました。台本を調整する段階で投げかけられたので、答えをまとめることができました。

「完成度を追求するために、装飾的趣向をこらすのではなく、むしろそれらを必要最小限度にまで省略する表現のスタイルは、現代の必要なものを最小限にまでそぎ落とすという「ミニマリズム」の考え方に通ずるものとして世界的に受け入れられているのではないか思います。」

「必要最小限」に関しては、「わびている」と評価される道具のデザインの側面を手がかりとしましたが、「世界的に受け入れられている」と付け加えたときには、禅が世界に広がっていることをイメージしていました。

ミニマリズムの創作理論が、美術に限らず、音楽、哲学、文学、建築と幅広い影響を与えていることからすると、茶道文化全体を見直すコンセプトとして活用しても良いのかと思っています。

岡倉天心は『茶の本』で、茶道をアート(芸術)として捉え直し世界に紹介しました。それを逆輸入するような形で、日本国内でも芸術として茶道を捉え直すプロセスが、茶道の近現代史を貫く通奏低音となっています。

歴史を振り返ると、その時代を生きている人々がその時代のコンセプトで茶道を捉え直し、「新鮮なもの」として受け止めることが、茶道が社会に受け入れられ、継続・発展していくための不可欠の条件でありました。

「わび」、「茶禅一味」、「芸術」というコンセプトに加えて、「ミニマリズム」を加えることで、茶道が未来につながればと考えています。

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