「茶道における身体表現」というタイトルでの原稿依頼を受けました。
身体表現とは、身体を使って自分の気持ちを外に表すということになります。点前・作法という形で、身体表現だけを教えているという茶道に対する理解もあるのだろうと思って、「茶の湯」と「茶道」を次のように定義して論考を始めることにしました。
「人を招いて茶を提供し,相手を歓待する気持ちを表現するに際して、伝統的なルールに準拠している形式が,「茶の湯」と呼ばれている.招く側の内面を表現する媒体は,「茶の湯」が実施される場所である庭園・茶室という建築関係,「茶の湯」に使用する「道具」として利用される書跡・絵画,陶磁器・漆器・金属器という美術工芸関係に加えて,「茶の湯」において自身の身体をどのように統御していくかという領域まで含まれている.
その「茶の湯」を実践するために必要なさまざまな知識・技能を修得する過程自体に価値があると判断し、学習の対象とする体系の呼称が「茶道」になる.」
その上で、「茶道における身体表現」として論じる内容は、身体をどのように統御していくかという領域に限定されることも付け加えました。
また、身体の統御という点では、茶道は、スポーツや舞踏に共通する側面をもっていますが、人を招いて茶を提供するという行為は,日常の生活行為である点で次元を異にしている点にも注意を喚起しました。
しかし、これだけでは、茶道における身体表現がいかなるものかに対して答えを与えたことにはなりません。「点茶七要」を概説することで課題に答えることができました。
理科系の研究者に、茶道や点前に対する予備知識を前提としないで答えようと努めることで、仙樵居士の教えの意義を再認識できたと感じております。