大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和6年7月の言葉:街は川とともに

 7月26日から8月11日まで、第33回オリンピック競技大会が、フランス・パリを中心に開催されます

 開会式では、セーヌ川が舞台となると聞いて、無観客で実施された東京大会のころを思い出しています。

 2020年の開催予定が2021年に延期されたのは、新型コロナウィルスの感染症の世界的流行を受けてのことでした。 「不要不急の外出は控えましょう」が、全国的な合い言葉になり、「県境を越えての移動を控えてください」という注意喚起もホームなどでもよくアナウンスされていました。

 その言葉を聞いて、横浜まで散歩に行くのはしばらくやめておこうか、と考えました。横浜に行くのは、岡倉天心の足跡を忍ぶといったら格好を付けたことになりますが、水辺の風景を見たいと思ってのことです。それならば、隅田川沿いに行けば良いではないか、という発想は、実は、還暦をすぎるあの頃までありませんでした。

 小学生時代の隅田川が、汚染のピークであったために足が遠のいたままになっていたのです。しかし、「都内での移動」のルールを守って、隅田川沿いを歩いてみると、訪れた場所それぞれに江戸の歴史とつながる発見があり、隅田川に架かっている橋を全部徒歩で渡ることになりました。

 1964年の東京オリンピックを契機に、水上交通から高速道路に交通手段が代わっていく過程を、幼稚園生であった私は実感できたわけではありません。散歩をしながら、高度成長で変化した東京の姿を追想していました。今、さらに新しいビルに建て替わっていくのを横目にすると、こうした回想すらむずかしくなってきました。

 東京の将来像に、川と共にあった歴史を組み込んでもらえないかと思うこの頃です。

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