新NISA制度の運用開始によって、「長期・積立・分散投資」という言葉が、今までになくメディアを賑わせているように感じます。危険を分散することが、大切なのは、首都機能の分散というような形でも十分語られてきました。
長期・積立の効用を説明として「複利効果」という言葉も盛んに出てきて、ネット上では、「運用益を受け取らずに元本に含めて投資していくために、得られる利益が増えていくのが複利の効果です。複利運用では時間の経過によって元本が増えるため、長期運用で特に効果を発揮します」という説明が行われています。
だから長期・積立の投資信託ということなのでしょう。しかし、私は、文学部で学ぶようなことこそ、「複利効果」が期待できるのにと思ってしまいました。
実用的な知識を伝えていないといって不要論すら唱えられる文学部ですが、実用的でないが故に、そこで学んだことは、自分の見方を広げてくれるものとして生涯利用可能なものです。
まだこんなことも分かっていなかったかと、至らなさを痛感させられる時は多々あります。しかし、学び続けてきたことで、いろいろな知識が結びついて、そういうことかと納得する経験もないわけでありません。蓄積してきたものがまとまって大きな効果を生み出したという点では、これも複利といってみたい気もします。
茶会の道具組をどれだけ豊かに味わえるかは、美しいものに対する感受性と並んで、道具の周囲に存在する歴史、文学の広がりをどれくらい受け止められるかにかかっています。
そんなに学ばなければいけないことが多いのは、ムリと敬遠しそうな世代にも、「複利効果」という側面から茶の楽しさを納得させて惹き付けられないものかと願っています。