大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和6年3月:春を待ちわびて

 カーニバル(謝肉祭)というと、日本では、リオのカーニバルのサンバのリズムとコステュームを思い浮かべる方も多いでしょう。

 カーニバルとは、四旬節に入る前日のカトリック教会のお祭りです。四旬節は、イエス・キリストの復活に至るまでのストーリーが埋め込まれた復活の記念日を迎えるまでの40日間で、その間にイエスの栄光から受難・処刑という設定を経て、待望の復活を喜びます。

 カナダのケベック州は、イギリスに植民地化された後も、フランス系カナダ住民への懐柔策としてカトリック信仰がみとめられた社会です。古くからカーニバルが行われていたはずです。しかし、現在のケベックでのカーニバルは、四旬節よりも早く始まりますから、カトリック教会の行事からは切り離されて世俗化したお祭りと申してよいでしょう。マスコットは、雪だるまの着ぐるみ姿の「ボノム」と呼ばれる雪男です。

 ケベック留学中は、大学のキャンパス内の学生寮に住んでいました。1月のある晩、けたたましい音楽ともに、マスコットを載せた車が、学生寮の前をパレードしました。氷点下20度の中、マスコットをのせた車両の行列に連なって、広大なキャンパスの敷地内を多くの学生たちが、踊りながら行進していました。旧市街の方が盛大なパレードを行っていたのでしょうが、私が接したのは、郊外のキャンパス内でのパレードでした。

「この寒いのに、外で踊るとは」とその行列を冷ややかに暖房の効いた室内から眺めたものです。

しかし、春の訪れを待ちわびて、エネルギーを爆発させたくなる気持ちに、以前よりも共感できるように感じています。ケベックの雪男も、「雪間の草の春」だったように思います。

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