大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和6年1月:ゾーン

「龍が現れるとめでたいことが起こる」との言い伝えから、辰年は縁起の良い年とされます。とくに、「甲辰」は、「甲・乙・丙・丁・・・」と数える十干の最初ですから、辰年の中でも、もっとも縁起の良い年という解釈もしてみたくなります。

 60年前の「甲辰」は、1964年、日本で最初の東京オリンピックが開かれた年です。その年にあやかろうと誘致した二度目の東京オリンピックが、どのようになったかは、まだ私たちの記憶に新しいところです。その経験から反省すれば、「外から幸せがもたらされる」と考える傾向を、見直してみるべきではないでしょうか。

 この反省は、近年注目の新実存主義の人間観にも通ずるように思います 新実存主義を提唱した新進気鋭の哲学者マックス・ガブリエルは、二度目の東京オリンピックを延期させたパンデミックの最中、インタビューを受けています(『つながり過ぎた世界の先に』PHP選書)。

 現時点で読み返すと、その時点でタイムリーだった話題より、基本的な指摘の方が、響いてきました。
 「人生の意味は?」と問われたら、「生きてることの意味は生きること」と答えるマックス・ガブリエルは、人生の意味は、自分のライフライン(命綱)を見つける能力にかかっていると指摘します。そのために、どんなことをしている時が幸せなのかを知る必要があるとするマックス・ガブリエルは、次のように述べています。

「人には、幸せになれるゾーンがあります。ゾーンは人によって違います。このゾーンを見つけられたら、それは自分の運命です。そしてその運命が幸せをもたらします。」

ゾーンを見つけよう、見つけているゾーンを大切にしようと過ごす一年にしたいものです。

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