大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和5年11月:茶文化の特質

 世界の抹茶の市場は、このところ年7パーセントを超える成長率が見込まれるといわれています。

 抹茶の加工食品の伸びに需要が支えられることにともない「茶道」対する関心も広がっています。しかし、それを手放しで喜んでいるだけでいけないとも感じています。

 海外で、日本の文化として「茶道」が発信される結果、日本人なら誰でも茶道のたしなみがあるのだろう、とか日本人はいつも抹茶を飲んでいるのだろう、というイメージを抱いて来日する人もいるからです。 日本に来て抹茶を飲んだことのない日本人がいることを知ったイギリス人は、「詐欺だ」と言いました。

 日本の文化の代表として茶道が取り上げられること、日本の茶といったら抹茶がとりあげられるのは、私たち茶道人にとっては心地よいことです。しかし、その認識は、国際的にみて通用する見方なのか、という客観的な視点も持たなければいけないことに、イギリス人の指摘は気が付かせてくれました。

 それ以来、日本の茶文化の特質を世界に通用する形でどうアピールしたら良いかと考えてまいりました。

 喫茶の風習は大陸から伝来したといっても、覆い下栽培、蒸し製法をはじめとした技術革新によって独自のお茶を生み出しました。そのお茶をカジュアルな形から、道の文化を標榜する形式(茶道・煎茶道)にいたるまで楽しんでいます。この多様性を日本の茶文化の特質として提示すれば良いのではないでしょうか。

 技術がすぐにマネされてしまう現代社会においては、オリジナルを保てるのは、産地だけという冷徹な見通しも必要だと思っています。日本各地のお茶を集めた「日本茶コレクション2023~日本茶のすべて~」を進めるのも、そのような考えに立ってのことです。

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