会報誌「えんじゅ」を創刊したのが、1991年。あっという間に30年の年を経ってしまいました。
121号からオールカラーにリニューアルするとともに、今まで記していた「えんじゅ」の名の
由来を割愛してしまいました。
えんじゅの1号には仙翁前会長が「槐(えんじゅ)と仙樵居士」と題して、命名の由来を、
北京を旅して古くは、朝廷で三公(大臣)の座位とした格式の高い槐の木が街路樹になっているのを
見た思いとともに以下のように記しておられました。
「戦前は、本部の庭にも植えられていましたが、戦災に遭って焼けてしまった。
しかし、芽を吹いて大木に育ったので仙樵居士は、この槐を慈しんだ。
昭和35年の正月に、念願の書院が落成したとき、仙樵居士は、座敷がこの木の南側に位置する
ところから、槐南軒(かいなんけん)と名付けた。
延寿という名のとおり、困難を乗り越える生命力と、三公の位の誇り高い茶道を護る意味を
込めたのだろう。槐には居士の心がこもっている。」
現在は槐の木はなくなりましたが、居士の作られた槐南軒は寸法を変えて会館の中に
引き継がれています。書院の建築のために居士自らが用意した木材で作られた槐南軒です。
新しい会館の建設の際にも、その息吹を引き継ぎたいという全く新しく作り直すのではなく、
古材を活かして、寸法を変えた変えて生まれ変わらせた仙翁前会長の気持ちが、会報誌の
命名の由来をさかのぼることによって、30数年経って改めて感じられるこの頃です。
新しいことにチャレンジし、変化に対応しなくてはいけない毎日だけに、ものの意味や
人の思いに対して、もっと理解しようという気持ちが大切に思えてきます。形ばかりを
真似をせずに、なぜ古人たちがこのような所作を伝えるに至ったのかという意味も自分なりに
考えることが、茶道を深めることにもつながるように思えます。