大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

【茶道コラム】第48回 点前の心得

茶会が本格的に再開し始めました。何年か大勢の方を持て成すことから遠ざかってしまうと、点前や給仕に
しても自分本位になってしまいがちです。
父仙翁もそんなことを思ってか、水屋入り茶席を担当する方々に、ずいぶん厳しい心得を書き記したことが
あると回想している文章を目にしました。

1. あなたの点前は、亭主の点てたお茶を客に振る舞うという重大な役割を果たすに値しているかどうか。
2. 点前には徹頭徹尾、もてなしの心がこめられていますか。
3. 最も洗練された点前と所作や動作を絶えず工夫し、稽古して完全に身に付けましたか。
4. 所要時間は最小限で、しかも客に満足感を抱かせることができるでしょうか。
5. ひとときの静寂を客に味わってもらっていますか。

 父は、忙しい時間を割いて茶席を訪れた方へもてなしの心の表し方として、このような厳しい言葉を記し、
目標としていたのだと改めて厳しさと、優しさを感じます。

 何が優しいかと言えば、最後の「ひとときの静寂を客に味わってもらっていますか」という言葉です。自分が
自分のために鍛錬することばかりを目標にするのではなく、その先にあるのは、茶席を共にする客の満足、
一体感だということです。
 つい、大寄せ茶会になると、全部で何回点前をし、何名を持て成せたかということばかりを気に留めて、
そこに居る一人一人がどれだけ客を持て成すことに働きをもてたかということを忘れてしまうからです。
 
 普段の稽古が厳しかったのは、目標が高かったからだと感じるとともに、私たちが目指す茶人は自分のための
振る舞いや点前ではなく、同席の人と過ごせる時間を大切に考える茶人だと改めて感じるこの頃です。

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