大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

令和8年5月:端言

「端言」は、「きっぱりと言い切る」ことを意味する古風な言い方です。「断言」という表現の方が一般的ですが、言質を取られることを恐れる現代の風潮では、いさぎよく、はっきりと言うこと自体が、避けられるようになっているかと思います。

父仙翁は、1982年刊行された最初の随想集に、『茶道端言』というタイトルをつけました。2017年5月31日に、亡くなってから、まもなく10年目に入ろうとする中で、あらためて読み返しながら、よくここまで言い切ってくれていると感じるようになりました。

「生きがい」と題した一文は最たるものの一つです。

戦前の国家目標、戦後の復興、高度成長といった他律的な目的が生きがいとされてきたのに対して、高度成長を達成した時点で「与えられた生きがいが無くなった」と断じています。そして、「より充実した人生を生きよう」という言葉が言われ始めてきたことを受けて、ものを習うことを真剣に行なうことに注目して、「生きがいとはこうした自分の努力に対して満足することではなかろうか」と言い切っています。

父がこう言い切ったのは、日本が世界第二位の経済大国になった時点で、先進国に追いつくという目標を達成した時期のことでした。その後のバブル経済とバブルの崩壊、失われた30年を経て、人生100年時代と言われる今、組織の中で与えられた目標達成が、人生を通じての生きがいにはなり得ないことが、強調されるようになりました。

何を習うものに選ぶかは、人それぞれでしょうが、ものを習うことに努力して、そこから満足を得ることを生きがいとする時代が来ているのではないでしょうか。

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