大日本茶道学会 - 公益財団法人三徳庵

【茶道コラム】第45回「学びは気がつくことから」

指導しているとき、仙翁前会長は、「指導する側の方が学ぶことが多いね」
とつぶやかれることが多々ありました。
教えているのに、学ぶって?と少々疑問に思うことが多かったのですが、
指導するのに余裕が出てくると、確かにいろいろな方の所作を見て、今まで
気が付かなかったことに目が届くようになったことは確かです。

多くの先輩方の所作を拝見していると、道具を置きつける場所や、扱いへ
の気配りなど参考にしたいことが沢山あるのです。

 先日も、「今日の教習のためにみんなで集まって練習して、どうにか一点前
できたので、本部に参りました」と話してくださる方があり、稽古に参加する
方々の真剣さと、その思いに頭が下がる思いでした。

 さらに「先生、みんなで研究してみたのですが、建水の置き場所がどの辺りが
よいのでしょうか。疑問がわいてきました」と質問をしてくださいます。 
 ただ順番を思い出しておく、点前をさらっておくだけではなく、今まで何度も
なさってきた点前に関して、これでよいのだろうかと考え、みなさんで研究する
という姿がなんとも嬉しくてたまりません。
 何かの所作をするためにはどうしたらうまくいくのかという研究はみなさん
されていると思いますが、これでよいのだろうかと自分の所作を客観的に見て、
気づく姿勢は、まさに仙樵居士が点前を研究された原点に通じるのではないかと
感じたのです。
 
 点前や所作を学ぶときには、客観的に自分を振り返ってこれでよいのだろうか、
また、人の所作を拝見して気づき、自分に置き換えて考えること、これが学び
ということだと思います。

 傘寿を過ぎた先輩のように、いつまでも人から学び、そして発見する楽しむ
姿勢を是非見習い、実践することが素敵な茶人へのワンステップとなること
でしょう。

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