先日、漸く茶会を催しました。皆様がそれぞれに楽しんでくださっている様子を拝見して、
改めて茶会を催すことのできる幸せと、人を招くことの楽しさ、また、足を運ぶ方々の喜びと
いうものを実感いたしました。
「どうぞ召し上がってください」と茶碗を差し出せば、「ありがとうございます。いただきます」
と茶碗を取り上げる客との呼応。
そのタイミングが、早過ぎもせず、また間があきすぎもしない。そのような絶妙な触れ合いの
瞬間が、客との一体感を持てた楽しみなのでしょう。
しかし、うっかりするとその間を崩しかねないことを危惧しております。マスクの着脱です。
あまりにマスクに慣れてしまったので、マスクを外すことをついうっかり忘れてしまいます。
すると、ちょっと間があくのです。
そんなことどうでも良いと思われるかもしれませんが、抹茶は時間が経てば沈んでしまいます。
「さあどうぞ」と出されてなるべく早くいただくのが客のマナーというものでしょう。
とすれば、これからは、どのようにお客様を持て成すかといった亭主側の配慮のほかに、
亭主の側のもてなしに間を崩さずに応えるためにいかにマスクと付き合うかといった客側の配慮
が必要になるでしょう。
取り外すタイミングばかりではなく、外したマスクをどこに取るのかといったことも一考の余地が
あります。畳に直に置くのも・・・・・。袖に入れるの?懐?
いろいろな場所で、様々な取り組みがなされているように、茶席の中でもマスクをさりげなく扱え
たら、コロナ時代の素敵な茶人と言えるのではないでしょうか。みなさんで目指してみませんか。
教場長 田中 仙融 (令和3年5月発行 会報「えんじゅ107号」掲載)