偶然見た映画のワンシーンに、お世話になった方の自宅を車で訪ねるシーンがでてきました。
車から降り、ドアを閉める音を「バタン」とさせ、玄関のベルを鳴らします。
何げないワンシーンですが、最近は個人のお宅を訪問する機会も少なくなってしまったなと感じ、
ふと、学生の頃、ゼミの先生のお宅に卒論の相談に伺った時のことを思い出し、さらには
母のこんな一言が頭をよぎりました。
「どなたかのお宅に車で伺うときには、少し手前で車を止めて、歩いていきなさい。
車のドアを閉める音が先方に聞こえるのは失礼ですよ。歩く距離を少し取ることで
心を落ち着かせることができるのよ。また、帰るときにも門の前に車を止めて置くと、
車に乗るまで見送らせることになるでしょう。それは、先方に失礼に当たるから、
見えない離れたところに停めておきなさい。」
今この言葉を聞く方は、駐車場に止めるのだから門前に停めないのは当たり前じゃない?
と思われるかもしれません。確かに、母の時代は車に乗っていくということもある意味
若い人にとっては贅沢でしたし、路上駐車も可能な時代でしたから。
ですから、この言葉を言葉の通りにとっては、今に活かすことはできません。
でも、これをタクシーや車で送ってもらう、迎えに来てもらうというシチュエーションに
おきかえてみたらどうでしょう。タクシーを門前で止めて降りない、また、見送って
いただいている目の前で車を拾ったり、乗ったりしない。という風に考えたら、応用できる
のではないでしょうか。
マンションやビル内にオフィスがあり、玄関の先まで迎えに出たり、人影が見えなくなるまで
見送ったりという心遣いをしなくてもよい環境に変化していますが、相手への思いやりの
気持ちがこのような小さな振舞にも込められていたということを忘れずに、日常のどこかで
活かしていきたいですね。